“いしずえ”の活動1

−T.自立教育と自立生活支援−


1.自立教育

■ “自立生活” を希望している “障害者” は、その 『すべての人が自立生活についての “深い知識” を持っているわけ』 ではありません. 否、むしろ 『そういう人は、きわめて “珍しい”』 でしょう. 若い人たちは、さまざまの機会を通して 『“自立” と “自立生活”』 について学んで行く必要があります. そして個々の “自立生活センター” においては、そういう人たちの “学び” を、いろいろの事を通してサポートして行くことがたいせつです. この “サポート活動” は、あえて言うならば “自立教育” と表現できるかも、カモ、鴨(ん…?)、知れません. そして、その中には 『“正しい情報” を提供する』 という事も、もちろん含まれるでしょう. しかし、これらの活動の中で “中心的位置” を占めるものは、やはり “ピア・カウンセリング” と “自立生活プログラム” ではないでしょうか.
 
1.ピア・カウンセリング
 
A.この “ピア” とは、すなわち “仲間” という意味で、ここに言う “仲間” とは 『すなわち“障害当事者”の仲間』 を指している. すなわち 『“ピア・カウ
ンセリング”(略して“ピアカン”) とは、同じ 「障害当事者の “仲間同士” での “カウンセリング”」 を行なうこと』 を言う. しかし、この場合は 『一方が他方を “一方的” にカウンセリングして指導する』 のではなく、その 『双方が互いに自立や自立生活についての悩みや問題点を出し合い、互いに解決策を考え合って話し合い、互いの持っている情報を交換し合って行く』 という形式で行なわれる. もちろん 『“新来”の自立生活志望障害者との“ピアカン”』 の場合には、 『先輩が初心者をカウンセリングし指導する』 という側面は、ある程度は避けられない. しかし、たとえ “初心者” と言えども “ピアカンの原則” は変わらず、先輩は 『自らの“意見”』 を “初心者” に押しつけずに 『自分の “体験” から得たこと』 を 『ひとつの “参考意見”』 として “初心者” に語って行けば (これを “クリスチャン用語” では “証し”[あかし] という) よい. 要するに 『“ピア・カウンセリングの目的” は、障害者が “地域社会” の中での自立生活を営んで行くために必要な “情報” を、お互いに “仲間の障害者同士” で交換し分かち合って行くこと』 である. そして “ピアカン” を通して 『自立生活志望者や自立障害者が、その 『正しい意味における “自信” を得、
あるいは 「その“確信”」 が増し加えられること』 が、その “最終的な目的” である.
 
B.CILにおけるピア・カウンセリングのおもな内容

a,自立と自立生活に関する相談と情報提供.
   
◆ 住宅探しとその改造や介助に関する相談や情報提供等、自立生活全般にわたる相談や情報提供、等.
  
b,自立生活に関する精神的サポート.
   
◆ 自立生活に関する 『正しい 「“自我像”や“自信”」 の回復』 や 『介助者との接し方をはじめとする 「“対人関係”のあり方」』 等、自立生活全
般にわたる “精神的サポート”.
  ※ 上記のような “ピアカン” を担当する障害者を “ピア・カウンセラー” と呼ぶ.
 
C.ピア・カウンセラーの資格
  
a,JILやCILの “自立生活理念” に基づく “自立生活” を実践している
『すべての“障害当事者”』.
  
b,『個々のCIL主催による 「2泊3日の “短期集中講座”」 および 「週1回・連続13週にわたる “長期講座”」』、または 『JIL主催による “養成講座”』(年2回) を修了した “障害当事者”.
  
c,上記の講座を修了し、かつ 『「“ピア・カウンセラー” としての経験」 を
積んだ “自立障害者”』 は、JILから正式に “ピア・カウンセラー” として認定される.
 
2.自立生活プログラム
 

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A.自立生活プログラムとは

● 自立生活プログラム(ILP) とは、障害者が自立生活に必要な心構えや技術を学ぶ場である. それは 『「障害者と健全者が “共に生きる場” としてある」 という認識から出発するのではなく、その “共に生きる場” をつくるために、まず 「障害者自身が力をつけていく場」』 である.
その “受講者の必要” に応じて “プログラムの内容” は決定されるが、そこには 『“介助者との関係” や “制度を使いこなす”、あるいは “指示を出して好きな料理を作ること” や “金銭管理” など、その 「自立生活に必要なあらゆることが “プログラム” として提供され」』 る. よく 『“行政” や “健全者主導の福祉団体”』等 の主催による “福祉の街づくり点検”等 と称して 『障害者の “電車 ・ バス体験乗車”』 が行なわれることがある. その中には一見すると 『“ILP的な要素” が含まれること』 もあるが、それはあくまでも “健全者主導” であって 『“ILP” とは 「全くの “無関係”」』 である. ここに言う 『「真の“ILP”」 とは、あくまでも 「“障害当事者” が “主体” となって行なわれる行事」』 である.
 
B.ILPとリーダー

a,JILの考えに従えば、ここに言う 『“自立生活プログラム” とは、すでに “自立生活” を営んでいる “障害当事者” が “リーダー” として 「“受講者” と “同じ視線”(つまり “対等” であること) で接するもの」』 である. そしてリーダーは、自らが “ロールモデル”(お手本) となって “受講者” に
『その “ノウハウ” を提供し』 て行く. ILPのリーダーも “障害当事者” が担当するため、受講者は安心して相談や質問ができる.

b,ILPリーダーの資格
   
1) 自立生活を営む “障害当事者”.
   
2) 個々のCIL主催による “ILP講座” を修了し、その “経験” を積んだ “障害当事者” は “ILPリーダー” として認められる.
 
C.ILPの目的

● 自立生活志望障害者または自立障害者の 『“自己責任” に基づく “自己選択” と “自己決定” の “意識” と “習慣”』 を育んで行くこと.


2.自立生活支援

■ 障害者の “自立生活支援” として、まず考えられるものは 『日々の日常生活を支える “介助者派遣”』 ですが、その他にも 『「障害者の “日常生活”」 を支えて行くもの』 としては 『“直接的なもの” と “間接的なもの”』 とを合せると、多くのものが考えられます. その中から幾つかを挙げてみると、次のようなものが考えられます.
 
1.自立生活体験室(未開設)
 
A.目的
  
◆ 自立生活志望障害者が、その自立生活を模擬体験すること.

B.方法
  
◆ CILが設置する “自立生活体験室” に “一定期間”(一週間前後) 入居して “自立生活” を “模擬体験” し、実際の自立生活に “必要な事” を “体験的” に学ぶ.
   ※ 自立生活体験室は 『自立生活志望障害者の受け入れには必要な設備』 で
あり、私たち “いしずえ” でも早期の設置を願っている.
 
2.社会資源の活用
 
A.社会資源とは
  
◆ 障害者が地域社会の中で自立生活を営んで行くとき、社会的な “制度” や “人材” を有効に活用することも 『たいせつな要素の “ひとつ”』 である.
そのような 『「社会的な “制度” や “人材”」 は “社会資源” と呼ばれ』 ている.
 
B.社会資源の例
  
a,ヘルパー数の不足を補完する 『当該CIL外 “ヘルパー派遣事業所”』.
  
b,行政(市町村)による 『公的 “住宅改造資金” 支給制度』.
  
c,“自立生活” に役立つ “社会的諸制度”.
  
d,その他.
 
C.社会資源の活用とCIL
  
◆ CILは 『障害者の自立生活を支える働きの一環』 として、自立障害者が社会的諸制度や他の社会資源を利用するときには、アドバイスや一部代行等
を通して自立障害者を支援する.
 
3.バリア・フリーの街づくり
 
A.バリアー(Barrier) とは
  
a,barrier[バリアー] … 意味 : 難関、関所.
  
b,隔ての障壁
   
◆ ふたつの違ったものが接触して交じり合うのを妨げる “隔壁”(隔ての中垣).
    ※例:a) 自然界 … 生物に有害な紫外線が地表に届かないようにしている大気中の “オゾン層”.
       b) 旧 “ベルリンの壁”.
       c) ほかの人々や民族に対する “誤解” や “悪い先入観” 等.
       d) 偏狭な政治思想や宗教的戒律.
  
c,障害者とバリアー
   
◆ 障害者にとっての “バリアー” とは、障害者の “社会進出” や “社会的
活動” を妨げる “あらゆるもの”.
    
1) 物理的バリアー
     
◆ 障害者の “外出” や “活動” を妨げる街中の “障壁・障害物”.
      ※例 : 鉄道駅舎の出入口段差・階段 ・ 券売機の高さ ・ 改札口等の狭い通路 ・ ホームと車両との段差、車道と歩道との段差 ・ 歩道橋 ・
歩道に立つ電柱 ・ 歩道に置かれた看板や商品 ・ 放置自転車 ・ 歩道に乗り上げられた放置自動車、店舗出入口の段差 ・ 店内通路の狭さやそこに置かれた商品、商品陳列棚の高さ、等々.
    
        
2) 心理的バリアー
     
◆ 障害者と健全者とを問わず、多くの人々の心の中に存在する “バリ
アー” で、健全者の場合は、その障害や障害者を拒絶して排除しようとする “心理的要因”. その(本質的根源は 『人間の “心” に巣食う “罪性” に由来しているが、その)第一の “原因” は 『“障害者” や “障害” への 「“無知” と “誤解”」 や “偏見” に基づい』 ている. また障害者の場合には 『周囲の “身近な人々” から受けた “差別” や “いじめ” 等による “心の傷” や、そこから生じた “健全者” 等への “不信感” 等』 が “心理的バリアー” となり、その結果として 『周
囲の人々との関係が “断絶” して “孤立” してしまうこと』 がある. 特に “日本” では 『“縄文 ・ 弥生 ・ 古墳時代” からの “伝統” を引く “神道” と 「古墳時代晩期に流入した “仏教”」 および「江戸時代
の封建社会の哲学的土台となった “儒教”」 の混合した “家思想”』 に基づいて 『障害者は “前世の報い” を受けた “呪われた者” であり “家の恥” である』 とする考え方が増幅され、こうして日本人の心の中には “障害者” 等に対する “心理的バリアー” が形成されて次第に強固になって行き、21世紀の今日に至るもなお根強く残っている.
 
B.物理的バリアーの影響を受ける人々
  
◆ 身体障害者(肢体不自由者・車イス使用者、視覚・聴覚障害者、……)、高齢者、妊婦 ・ 乳幼児同伴者、病人 ・ 虚弱者、…、等.
   ……『障害者に優しい街は 「“すべての人々” に優しい街」 である』 という言葉がある.

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C.バリア・フリー社会をめざして
  
a,バリア・フリー(the Barrier free)とは
   
◆ この“free”[フリー] とは “自由” という意味であるが、ここでは 『障害者や高齢者等の外出を妨げる “種々の障壁”(バリアー) が “ない”』 という事を意味している. すなわち “バリア・フリーの街づくり”、それ
は 『“物理的” にも “心理的” にも 「“バリアー”のない街」 をつくって行こう』 とすることである.
  
b,バリア・フリーの街づくりの具体例
   
1) 道路や建物の“段差”をなくす、歩道や通路に “物” を置かない.
   
2) 鉄道駅舎には必ず “エレベーター” や “スロープ” を設置し(→“エス
カレーター” … ×)、ホームと電車との段差を解消する.
    ※ 時々 『高架駅の “障害者対策”』 として “エスカレーター” を設置する所を見かけるが、それは 『真に “障害者の立場” に立ったもの』 ではなく、初めから 『“健全者中心” の考え方』 でしかない. それは 『エスカレーターは “障害者” だけではなく、高齢者や妊婦 ・ 乳幼児同伴者、
等にとっても 「非常に “危険な乗り物”」 に過ぎないから』 である.
   
3) その 『「“街” 全体」 を 「“障害者” や “高齢者” の “移動 ・ 活動”」を “基準” にした “ユニバーサル ・ デザイン” として設計し』 て造る.
 
D.CILとバリア・フリー社会
  
a,バリア・フリー社会建設の土台
   
1) 人間の尊厳と多様性、そして 『個人の “独立性” と “唯一性”』 に根ざした人間教育(→その基本は 『“聖書” に基づく人間教育』).
   
2) 障害児教育は『“養護学校”における“特殊教育”』ではなく、一般の 『“普通学校”(普通学級) における “普通教育”』 を “原則” とする.
   
3) その “物理的 ・ 心理的バリアー” を除去して “社会的バリア ・ フリー”
を推進して行く. そして、その基本は “心理的バリアー” を除去する事!
    
◆ 人々の “心理的バリアー” を除去する方法
     a) 正しい啓蒙活動.
     b) 障害者自身の自立と実践.
    ※c) 各自の罪性の認知と悔い改め、およびキリストによる救いの体験.
  
b,バリア・フリー社会とCILの役割
   
1) さらなる 『“バリア・フリー推進” の “必要性”』 を “一般社会” に発信し、強力に “アピール” して行く.
   
2) 個々の “具体的事がら”(例:駅のエレベーター設置問題) に関しては、その担当行政当局や事業者と粘り強く交渉して、その実現をめざす.


nozaki_station.bmp←JRを点検    toilet1.bmp←JRを点検  megumi_mae.bmp←めぐみの家(バリアフリーな玄関)

4.住宅サービス
 
 
A.住宅相談
  
◆ 自立生活志望障害者が 『“適当な住宅” の “探求” や “改造” について知りたいこと』 があったり、既自立障害者が “住替住宅” を探求したり、また
家族同居の在宅障害者や高齢者が 『既住住宅の “バリア・フリー化改造”』 を検討したりする時、障害当事者を中心とするスタッフが “相談” に応じてアドバイスしたりする.
 
B.改造へのアドバイスと支援
  
a,その 『改造希望障害当事者の “意見”』 を “最大限” に尊重しつつ、具体
的な “改造プランの作成” に “アドバイス” を与えたり、その作成を支援したりする.
  
b,住宅改造には “資金” が必要であるが、各市町村には 『障害者向け “住宅改造資金支給制度”』 が用意されている (詳細は各“市町村” へ問い合せて下さい). CILとしては、その利用者にアドバイスしたり、その手続きの
一部を代行したりして支援する.
 
C.住宅取得への支援
  
◆ 住宅探求の自立生活志望障害者等と共に、CILの 『“障害当事者” を中心とするスタッフ』 が 『“街の不動産業者” を訪問したり、その “物件” を見学したりし』 て当事者にアドバイスしたり、その “交渉” を支援したりす
る(生活保護受給者には 『賃貸住宅の “家賃補助制度”』 があります).
 

5.移送サービス

 
 
A.移送サービスとは
  
◆ 自力移動の困難な障害者等を、その自宅等から目的地まで送迎すること.
 
B.移送手段
  
◆ CILの所有車(特別の場合には 『“個人所有” の自家用車』 を利用することもある).
 

6.就職(就業)援護
 
 
A.障害者の優先雇用
  
◆ CILでは 『ヘルパーや運転者等の 「“要有資格”者」』 を除き、事務局等の職員としては 『“障害者”を“優先”し』 て雇用する.
 
B.就職支援
 
◆ 障害者が 『“一般企業” 等への “就職”』 を希望し、かつ彼(女)に “その能力” があると認められる場合には、その人の “就職” を支援する.
 
C.授産作業所等への紹介
  
◆ 一般企業等への就職やCIL職員としての就職には “困難” があるとして
も、就業意欲のある障害者には、CIL系列 (または傘下)の “授産作業所”(福祉共同作業所) を紹介し、そこでの努力次第で能力が開発されて開花するならば、一般企業等への “就職の道” が開かれる “可能性” もある.
 

7.短期宿泊(未開設)

 
 
A.家族の外泊時や病気時等における “在宅障害者” や 『“住居変更手続き” 中等の自立障害者』 の “宿泊場所” を “一時的” に (数日〜1か月程度) 提供する (“自立支援法” 支給対象).
 
B.その場所としては、CILの “自立生活体験室” や 『グループホームの “空
き部屋”』 等を使用する.
 

8.障害者の結婚と家庭的自立への支援

 
A.障害者と家庭
  
a,家庭の本質(家庭の単位)
   
◆ 日本人の “家庭観” によれば、その 『“家庭の単位” は “夫婦” ではなく “親子” である』 とされてきた. しかし、このような家庭観は日本人が
古代から持っていたものではなく、15〜17世紀の戦国〜江戸時代前期の封建社会の確立と共に日本社会の中に深く浸透していったものである. 一方、欧米人、特に米国人の家庭観は 『家庭の “単位” は “親子” では    なく “夫婦” である』 というものである. それは現在ではかなり失われているが、元来は 『“米国” という “国家” は 「“聖書” の上に立てられたもの」 だった』 からである.
  
b,障害者と結婚・家庭
   
◆ このような “日本人の家庭観” は、長らく 『“家庭的自立” や “結婚の喜び” を 「“障害者” から奪ってきた “一因”」』 にもなっていた. いうまでもなく 『すべての人が結婚するわけではない』 が、障害者もそ
の “意志” があり、それが “可能な状況” にあるならば、各自は 『積極的に “結婚” を求めて “家庭的自立” を目指して行くべき』 である. ある意味においては、私たちが結婚して “健全な家庭” を築き上げて行く事は、 『「世界で “最大の仕事” と言われている事業」 を成し遂げることよりも 「“重要” かつ “偉大な事”」 だから』 である. なお “障害者の結婚” というとき、その 『相手が “障害者” が適当か、それとも “健全者” か …』 という問題につまずく人もいるが、それは 『各組それぞれの “個々のケース” に委ねるべき事がら』 である.
    ※『それゆえに人は父母を離れて妻と結ばれ、ふたりの者は一体となるべきである』(聖書)
 
B.障害者の家庭的自立とCILの役割
  
◆ CILは、そこにおける “ピア・カウンセリング” や “セミナー” 等、いろいろの “活動” を通して 『障害者自身の “結婚” や “家庭的自立”』 を支援し、その 『障害者の “家庭形成”』を “さまざまのかたち” でサポートして行く.

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